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2014.06.25
丸木の小舎
椅子に腰をかけたまま両脚を踏み伸ばし、両腕を高く組んで、忌々しそうに唇を噛みしめつつ、机の上の髑髏に眼を外らして白眼み付けた。その兇猛な、慓悍な姿は、もし知らぬ人間が見たら一眼で顫え上がってしまうであろう。
けれども女は眉一つ動かさなかった。その淑やかに落ち着いた振袖姿は、ストーン氏とまるで正反対の対照を作っていた。ストーン氏は、そうした女の態度を見かえると、吐き出すような口調で問うた。
「ジョージはどうしましたか……それから……」
「はい。二人で曲馬場を出ますと嬢次様は、表に立って絵看板を見ていた夕刊売りから夕刊を二三枚買って、一面の政治欄を見ておられましたが……」
「政治欄……政治の事が書いてあるのですね」
「そうでございます」
「どんな記事を読んでおりましたか」
「……さあ……それは妾には、よくわかりませんでしたけど……どの夕刊の一面にも……日仏協商行き悩み……と大きな活字で出ておりまして、英吉利と亜米利加が邪魔をするために日本と仏蘭西の秘密条約が出来なくなったらしいと書いてありました」
「……ジョージはそこを読んでおりましたね」
「……それからその中の一枚に……極東露西亜帝国……セミヨノフとホルワットが露西亜の皇族を戴いて……という記事と……張作霖が排日を計画……という記事がありましたのを嬢次様は一生懸命に読んでおられました」
「曲馬団の前で?」
「いいえ。ずっと離れた馬場先の柳の木の蔭で読まれました」
「……フ――ム……それからどうしました」
「嬢次様は、そんな記事を見てしまわれますと、深い溜息を一つされました。そうして……これはなかなか骨が折れるぞ……と云われましたが、その時にふっと曲馬場の入口の方を見られますと、急いで妾の手を取って、近くに置いてあった屋台店の蔭に隠れられました」錦糸町の美容院で美髪美人を提案
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