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2014.06.25
泥棒をするため
「いいえ。嬢次様は御自分のものを受取りにおいでになったのです。嬢次様が曲馬団を逃げ出されないように、嬢次様の一番大切なものを隠しておかれた貴方のなされ方が悪いのです。何故だかわかりませぬけれども嬢次様の自由を縛っておかれた、貴方がたの方がお悪いのです」
ストーン氏の顔は又険しくなった。しかし、こんな事で争うのは大人気ないといった風に、軽く肩をゆすって手紙の方に眼を移した。
「それから貴女はジョージが楽屋へ這入るのを見ましたか」
「はい。見ておりました。ちょうどその時に貴方は楽屋の外から這入って来られまして、ハドルスキーさんに後の事を頼んで、カルロ・ナイン嬢に挨拶の言葉を教えて……自分はこれから警視庁に行くから嬢次の写真を四五枚持って来い。今まで帰らなければ仕方がない……と云われました。それでハドルスキーさんは直ぐに探しに行かれましたが間もなく出て来て……駄目だ錠前が三つも掛かっている上に、その機械が三つとも壊れている……と云われました。それで今度は貴方が御自分でお出でになりましたけれども、やはり錠前が開きませんで、写真がお手に入りませんでしたので、そのまま警視庁へお出かけになりました」
「あの錠前はジョージが壊したのです」
「それは、お言葉の通りでございます。嬢次様は曲馬団を出がけに、持って行く隙がおありになりませんでしたので、ただ、あなた方の合鍵で明けられないように、錠前だけ壊して行かれたのです」
ストーン氏はちょっと唇を噛んだ。医学部受験を通信コースで