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2014.05.08
電子本を読む
「電子本は大量の部数を望めない出版物を少ないリスクで刊行する手段としても生かされるだろう。マッキントッシュで書き、ハイパーカードのページにテキストを流し込み、一冊の本を作る。こうしたケリの付け方は、DTPの輪の、一つのつつましい閉ざし方だろう」
エキスパンドブックを〈読む〉ことを論じながら、僕はエキスパンドブックを〈作る〉話で原稿を締めくくった。
この年の暮れ、件の編集者からもう一度連絡があった。ボイジャーが今度は本当にエキスパンドブックを作るためのソフトウエアを出したということで、ツールキットと名付けられたこの道具のレビューをやらないかとの再度の打診だった。
あらかじめ用意しておいた原稿をツールキットに流し込んでみると、簡単に自分のエキスパンドブックを作ることができた。評価記事の構成をまとめながら、僕は指のあいだを砂のように擦り抜けていった『パソコン創世記』のことを考えていた。ツールキットを使えば、手元にももう二冊しか残っていないこの本を、エキスパンドブックとしてよみがえらせることができるのだ。
翌一九九三(平成五)年二月、幕張で開かれたマッキントッシュのショーに出かけてみると、ボイジャージャパンを名乗るところが小さなブースを出していた。かつてレーザーディスクに新しいメディアとしての可能性を感じとり、ソフトの供給子会社として設立されたパイオニアLDCに籍を置いていた萩野正昭さんは、コンピューターの上で新しいメディアを開拓しようとするボイジャーのボブ・スタインと出会って、彼の試みに深い共感を覚えた。解剖生理学スクール 解剖学・基礎医学の個別指導塾・家庭教師