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2014.04.19
さもうまそうに柔かい粥を食べる
子供の口元を、夫婦は何事も忘れて傍から見守っていた。
「真実によかったねえ、こんな物が食べられるようになって。」
お銀は口の側などを拭いてやりながら、心から嬉しそうに言った。
「そんなにやっては多くないか。」
中途葛湯で一度失敗ったことのあるのに懲りている笹村は、医師の言う通りにばかりもしていられなかった。
「大丈夫ですよこのくらいは。あんまり控え目にばかりしているのもよし悪しですよ。」
お銀は柔かそうなところを、また蓮華で掬ってやった。
「どれ立ってごらん。」
笹村は箸をおいて、さも満足したように黙っている子供に言いかけた。
子供は窓際に手をかけてやっと起ちあがったが、長く支えていられなかった。
「まだ駄目だな。」
笹村は淋しそうに笑った。
その窓際では、次の女の子がやっと掴まり立ちをするころであった。長い病院生活のあいだ、ろくろく母親の乳房も哺ませられたことなしに、よそから手伝いに来てくれている一人の女と女中の背にばかり縛られていた。看護疲れのしたお銀の乳が細ってからは、その不足を牛乳で補って来たが、それでも子供はかなり肥っていた。女中はそれを負って、廊下をぶらぶらしたり、院長の住居の方の庭へ出て遊んだりした。院長の夫人からは、時々菓子を貰って来たりした。つい近所にあるニコライの会堂も、女中の遊び場所の一つになっていた。モッズヘア越谷店はグループ全国売上2位